碧電9周年記念 な仲間たち

第29回 クハ415-1901  10.5.23UP

”座って通勤”を目指した2階建て普通車

●”座って通勤”を目指した2階建て普通車

私も首都圏での通勤を経験していますが、「体自体が縮む」、「鞄の手を離しても落ちない」など、その混雑ぶりはいろいろな表現が成されています。私のように30分程度の乗車時間ならばともかく、バブル時代、土地も住宅も高騰し、通勤時間が2時間を超えるようなところにしか家を買うことができない人も少なくない時代になっては、もう少しましな通勤をしたいと考えるのは当然のニーズでした。
 鉄道会社側でも何も手を打たなかったわけではなく、対策の一つとして、着席定員を増やす試みがなされました。そのような背景で常磐線用として試作されたのがクハ415-1901です。415系の一員のため、本来はクハ411となるところを、新たな車両としての区別を明確にするため、あえて新形式のクハ415を名乗ったとされます。
 2階建ての電車と言えば、かつては近鉄の専売特許のような印象があり、その後登場した新幹線の100系、クハ415-1901に先立って登場した普通列車用グリーン車、サロ212などを含めて特殊な車両でした。基本的には特別料金が必要なもので、庶民が気軽に乗れるようなものではありません。それを考えると、定期の普通列車に連結され、特別料金なしで乗れることはある意味で画期的でした。
 同形は1両だけが試作され、時刻表にも「2階建て車両連結」と表示される限定運用に充当されました。
 1992年には同車の量産車とも言えるオール2階建て車両として215系が登場しました。同系は10両編成で15連並みの着席定員を確保することを目標として製造されました。当初は日中の東海道線快速「アクティー」に運用され、充当列車を狙って行けば気軽に乗れるものでした。しかし、構造上、乗降に時間がかかってしまうため、座席定員制の「ライナー号」や休日の臨時列車などに充当されるのみとなり、当初のコンセプトである”座って通勤”を十分に提供できているとは言えない状況にあります。
 クハ415-1901は415系のE531系への置き換えが始まると早々に廃車対象となり、郡山工場で解体されてしまいました。1両のみの試作車とはいえ、僅か14年使われただけで廃車解体とは哀れです。簡単な改造で113系などとも併結が可能であったと思われるだけに、地方で乗客を喜ばせるような余生を送ってほしかったと思うところです。
 なお、同車は前回紹介させていただいたJS3VXWの鉄道管理局さんでも扱われています。珍車ギャラリー:JR東日本 クハ415-1901も参照ください。

クハ415-1901 2002.11.3 常磐線 内原−友部


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