第14回で扱ったクモヤ191系の後継車です。クモヤ191系は改造車でしたが、今回扱うクモヤ193系は新製車で、1980年3月に近畿車両で製造されました。
当時、首都圏では地下鉄直通区間でATCが採用されていたほか、山手線、京浜東北線へも導入されることが決まっていました。当車は当然ながらそれに対応できる仕様となっていました。新性能車では標準の2両ユニット方式ですが、クモヤ192にはATC車上装置が搭載され、運転台側の台車にはモーターがありません。これは、ATC区間では正確な速度を検出する必要があり、ブレーキ力を下げて滑走を防止したためとのことです。
また、架線の摩耗測定にはレーザー光方式が採用され、日中の測定が可能となりました。しかし、この点に関しては在来のクモヤ191系などが日中に検測パンタを上げて走行するシーンが度々発表されており、それらが摩耗測定だけは夜間に改めて行っていたのかどうかは疑問です。
分割民営化後はJR東日本の所属となりました。当初、前面に大きなJRマークが描かれましたが、これはさすがに見苦しいもので、撤去されたことを知った時には安堵しました。
首都圏各線が守備範囲であったため、思わぬところで偶然見かけることもしばしばありました。別の列車を撮影していて思わぬオマケが付いたという方も少なくないことでしょう。193という形式番号からファンの間では「一休さん」とも呼ばれ、親しまれましたが、2002年に登場した総合試験車、E491系「イーストアイ-E」に役目を譲って引退しました。
東北本線の直流区間の検測を行う193系クモヤ192-1(南シナ) 1982.11.1 鶯谷