碧電9周年記念 な仲間たち

第23回 キハ391形  10.4.11UP

ガスタービンエンジン搭載の試作車 キハ391系

●ガスタービンエンジン搭載の試験車

近年、気動車には電気式ハイブリッド車が登場していますが、基本的には主動力にディーゼルエンジンを使用しています。1970年代当初、ガスタービンエンジンエンジンの特性を生かし、高速化を目的とした試作車のテストが行われました。
 ガスタービンエンジンは高圧燃料ガスを羽車に噴射して回転させるもので、その構造はディーゼルエンジンとは大きく異なります。機関重量あたりでは桁違いに大きな出力を出すことができるのが特長ですが、ヘリコプターなどの航空機に使用されていることを考えれば納得できるでしょう。変速機を搭載しない直結駆動などによって大幅な軽量化を図り、軌道が脆弱な地方路線の高速化の可能性をも秘めていました。
 1972年、非電化区間の特急用を想定して開発されたキハ391形が完成しました。前面形状は181系などの貫通型に似ており、塗装も特急用に準じています。しかし、車体は大幅に低く抑えられ、短い中間車にエンジンが搭載され、前後の車体を中間車で支える連接車になっています。さらに、当時、電車でも試験が行われていた振り子式が採用されています。在来の気動車特急を踏襲した外観からは考えられないほど新しい試みがふんだんに取り入れられていました。
 川越線を皮切りに、山陽線、伯備線、山陰線などでテストが行われましたが、さまざまな問題点が明らかになりました。特に発車時のひじょうに大きな騒音や、181系気動車の倍近いという燃料消費量は目立った欠点でした。
 結局、投入を計画していた路線の電化が決まったり、さらに、致命傷になったのはオイルショックによって燃料消費量を抑える省エネ指向へ転換せざるを得なくなったことです。気動車の歴史を大きく塗り替えていたかも知れないガスタービン車の開発は結局中止されてしまいました。
 試験終了後、長らく米子駅に留置されていましたが、製造元である大宮工場に引き取られ、一般公開の機会に何度か展示されました。結局実用化はされませんでしたが、さまざまな試みを盛り込んだ先人たちの挑戦は、鉄道の技術史上も貴重であると思われます。きちんとした形で保存されることを望みたいところでしたが、前頭部だけを残して、貴重なメカの部分は処分されてしまったようです。

大宮工場一般公開で展示されたキハ391-1 1991.10.19 or20。楽に撮れた写真のように見えますが、人がいなくなるまで何十分も粘った労作です。


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