その名のとおり、青森県の津軽半島を縦断する非電化の鉄道です。ローカル私鉄の味満点ともいえる当社の魅力にすっかり取り憑かれてしまった方も多いことでしょう。始発駅は列車本数の少ない五能線の五所川原で、アクセスは決してよくなく、私もなかなか訪れることができませんでした。
当社では客貨両用にディーゼル機関車を保有しており、古くから通学用の客車列車や混合列車(旅客列車と貨物列車を連結したような列車)が運転されていました。機関車は新潟鐵工所製のロッド式機関車DD350で、すでに2両とも40歳を越えています。茨城交通のケキ100型もほぼ同型といって差し支えはなさそうです。
秋の収穫期には混合列車だけでは輸送力が不足し、気動車にも貨車を連結して走ったのは過去の話です。現在では貨物列車はなく、(記事を記した2000年の段階で)定期列車は全て新型の軽快気動車、津軽21型(走れメロス号)によって運行されています。しかし、毎年冬季にはDD350が牽くストーブ列車が2往復運行され、冬の風物詩ともなっています。機関車に暖房用の蒸気発生装置(SG)がないため、客車の一部の座席を撤去してだるまストーブと呼ばれる石炭焚きのストーブが設置されます。ストーブ列車はどうしても必要があって運転されているわけではなく、観光列車的な色彩が強いと言えます。国鉄から払い下げられたオハフ33型、オハ46型は本物の旧形客車であり、冬季だけの運行にも関わらずたいへんよく整備されています。
私も長い間当線の訪問を夢見ていましたが、なんとか20世紀の内にと決意したのはキハ22000型気動車が定期運用からの引退が決まった2000年2月のことでした。初訪問時には一面の銀世界を煙突から煙をたなびかせて走るストーブ列車の撮影、赤々と燃えるだるまストーブの温もりを堪能することができました。
その8ヶ月後には開業70周年を記念して「きしゃっこカーニバル」というイベントの開催が発表されました。めったに運転されなくなっていた西武鉄道の電車を改造した客車や貨車が動き、津軽鉄道の「味」が再現されると聞いては思い切って再訪する決心をしてしまいました。たいへんすばらしい企画で、遠路はるばる訪問した甲斐がありました。