■樽見鉄道 SLうすずみ号-運転から30年-

2020.9.20 公開

(注) 拡大画像はJava Script を使用しています。ポップアップ自動カットを停止してご覧下さい。

●SLうすずみ号が走った時代

1990.8.25、樽見鉄道でSL列車が運転されました。使用されたのはJR西日本から借用したC56160です。JR東海、JR四国のほか、日頃は旅客営業を行わない仙台臨海鉄道でも運転実績を有するなど、類例を見ないほど幅広い足跡を残した同機の特筆に価する実績です。
 ここで、樽見鉄道のSL列車が走るまでの歴史をごく簡単に振り返ってみましょう。国鉄樽見線から第3セクターに転換開業したのが1984年10月。その4年半後の1989年3月に工事が凍結されていた神海〜樽見間が延伸開業しました。SLの運転はその翌年になります。
 世の中はバブルの最盛期と言ってもよい時代。当時勤務していた東京の職場の周囲では古くて小規模な建物が取り壊され、新しいオフィスビルが相次いで建設されていました。
 樽見鉄道は春の桜シーズンを中心に4〜5両の客車編成2本が運行さていたほか、JR線からの各種乗り入れ列車(その1で紹介)も走り、活況を呈していました。
 会社設立以来、国鉄出身者を中心にしたメンバーが会社を軌道に乗せるために様々な施策を実行しましたが、SLの運転はそんな方々にとって夢が叶ったものであったと言います。
 業務多忙もあって2ヶ月ぶりの撮影となったこの日、記録ノートによれば東京駅6:06発の新幹線で名古屋、在来線に乗り換えて大垣へ。9:07発の「うすずみファンタジア号」で樽見へ向かったようです。


大垣駅で待機するSL用編成
朝、大垣に到着すると、この日のSL列車に充当される1000形客車(←JR12系)が停まっていました。

朝、大垣に到着すると、この日のSL列車に充当される1000形客車(←JR12系)が停まっていました。「うすずみファンタジア」牽引機として専用塗装をまとったTDE10の2号機ですが、今日はこちらがSLに。国鉄色にV字の帯が入った1号機が「ファンタジア」を牽くという牽引機のトレード?が行われました。2号機には母校鉄道研究会の後輩たちが製作したヘッドマークが取り付けられています。

1号機+うすずみファンタジア
根尾川を渡る「うすずみファンタジア」

撮影ポイントとしては、東大垣から揖斐川の鉄橋にかけての25‰の勾配区間が圧倒的な人気になることは明白でした。そこは国鉄樽見線時代、勾配に対応するために重連となったC11の見せ場でした。
 しかし、人が多すぎると判断して有名ポイントには目もくれず、89.3開業の新線区間を選びました。
 SL列車の前に樽見から戻って来た「うすずみファンタジア」を撮影します。新しいコンクリート橋が新線らしいですね。

SLうすずみ号(1往復目)
トンネルを抜けてSLうすずみ号が姿を現した

いよいよSL列車がやってきます。揖斐川のポイントは「爆煙」だったようですが、これくらいのほうが自然です。
 意外なことにヘッドマークが付いていません。機関車の次の12系客車にJRマークが入っているため、一部で機関車と一緒に客車も全てJRから借りられたと思われているようですが、客車の2両目以降は窓下の帯がピンクに、裾の帯が2重になるという変化が認められ、まぎれもなく樽鉄所属車です。当時、元12系樽鉄車は4両しかありませんでしたが、借用のスハフ12のおかげで機関車次位が切妻車にならず、編成美が整いました。

うすずみファンタジア
うすずみファンタジア号の2往復目

樽見からの戻りの列車はポイントを変えます。その写真は省きますが、2往復目もここ、木知原−本巣で待ちます。まだ織部駅はない時代で、本巣駅からはかなり距離がありました。SLのほか、「うすずみファンタジア号」も運転されていて、客車はフル稼働となりました。
 この日はなんらかの理由で三脚を持ってきておらず、カラー、モノクロのどちらかしか撮っていません。カラフルなこの列車をモノクロで撮ったのは、正面が影になることと、午前中にカラーで撮ったからだろうと思います。

日中の気動車列車
ハイモ180+ハイモ230

日中の利用者もそこそこ多かったはずで、気動車は2両編成になりました。手前側は後年、有田鉄道へ移籍したハイモ180-101ですね。
 この日は好天のため暑くて、待ち時間は道路のアンダーパスで日差しを避けていたようです。また、撮影地の移動にDCにも乗りましたが、大混雑で乗り降りは一苦労だったと記録ノートに書かれています。

SLうすずみ号(2往復目)
SLうすずみ号(2往復目)熱い視線を浴びてC56がやってきた。

SLの2往復目がやってきました。木知原に向けてサミットがあり、煙を期待していましたが、目論見どおりです。
 機関車の次位、JRマーク入りのは窓が閉まっているのに対して、2両目以降は開いていてSLの音、匂いを楽しんでいるのがわかります。1往復目も同じ状況です。1両目はいわゆるVIP車、招待客向けの車だったのかもしれません。エライさんが乗っている車は冷房が効いていなければならないという意図でしょうか?

SLうすずみ号(後打ち)
こちらはカラーで撮ればよかったと少し後悔

TDE102号機が後ろからプッシュしています。本来の用途、「うすずみファンタジア号」に1号機を充当し、2号機をSL列車に使用したのは、樽見鉄道ならではの色を出したかったからでしょうか。
 国鉄スタイルそのままの3号機(元衣浦臨海KE655)や5号機は日中の客車列車には使用されませんでした。(3号機は夕方の客車列車に充当)
 ヘッドマークを付けなかったことを含めて、事情、ご判断があったことと思われます。

SLうすずみ号(2往復目復路)
西日が良い感じに。客車の塗装とフィットしているためか派手な塗装の2号機は浮いた感じがしない。

折り返しの復路はどこで撮るか迷ったようですが、木知原(こちぼら)付近にしました。89.3の全線開通の日、鉄研現役生に紹介したポイントです。もうだいぶ陽が西に傾いていますね。
 駅を過ぎると緩い上り坂があるせいか投炭していたようで、思ったより煙を吐いてきました。
 ここでは鉄研の後輩Iさんと会うことができました。ここに来れば誰か来ているだろうと思ったそうです。

SLうすずみ号(ラスト)
SL薄墨号最終便

木知原からはIさんと一緒に行動しました。Iさんは愛知県内の企業に就職し、希望する事業所に配属されたと話してくれました。
 大垣〜樽見を2往復したC56は機関区がある本巣まで戻る列車が最終便になります。もう移動できるのは近くに限られます。遅延が発生していて、糸貫駅から撮れそうな場所まで急いで移動しました。
 煙は薄いですが、勢いがあります。スピードに乗っていて、せわしいドラフト音に迫力を感じました。

樽見鉄道(基本編)に戻る

会社一覧に戻る

碧海電子鉄道 © 2001-2020 鈴木雄司(トップページへ)

inserted by FC2 system