■樽見鉄道(基本編)

2001.1.12 更新

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岐阜県の国鉄樽見線を1984年10月に引き縦いだ第3セクター鉄道です。

●転換開業から全線開通まで

第3セクター鉄道としては初めてレールバスを導入した一方では貨物輪送用にこの規模の鉄道としては大型のディーゼル機関車4両(開業時には3両)を保有し、通学用に毎朝定期客車列車が運転されていました。(ただし休校日はレールバス)
 これらのDLはJRのDE10、DE11に準じた設計で外見もそっくりです。開業当初はTDE101号が新製された他、輸送量が大幅に減っていた愛知県の衣浦臨海鉄道からKE65型2両を購入してTDE102、3号機として就役しました。そのほかに小型のレールバスではさばききれない朝の通学用にレールバスと同様に塗られたオハ35系ストーブ列車が運転されていたことは特筆に価します。


朝の客車列車(樽見色)
新車のTDE101が国鉄払い下げの旧形客車オハフ500(旧オハフ33)を牽く。206列車  1984.10.23 東大垣

開業間もない頃撮影したTDE101が牽くオハフ500形2連による通学列車です。
 開業時の車両は写真の3両の他、DL2両と2軸のレールバス3両でした。
TDE10は蒸気発生装置(SG)を持っていないため、冬季には車内にストーブが設けられました。しかし、こちらは津軽鉄道とは違い、石油焚きでした。
 大きな輸送力を必要とするのは朝の1本に限られていたため、製造費、保守費のかかる気動車を導入して日中遊ばせておくよりは、貨物用のDLに客車を牽引させた方が合理的と考えられたものと思われます。

腕木式信号機とレールバス
腕木式の場内信号機とレールバス、ハイモ180。

1950年代以来のレールバス復活はタッチの差で名鉄に先を越されましたが、開業用に準備された旅客車両の主力は3両のハイモ180形でした。
 この塗色は地元の女子中学生の応募作とのことですが、根尾川沿いの自然に映えてよい色だと思います。
 トーン、トーンという2軸車独特のジョイント音が耳に残ります。
 この当時は本巣駅の場内信号機には腕木式が残っていました。

国鉄から乗入れのミステリー列車
国鉄から乗り入れの12系ミステリー列車

第3セクターとなってから初めての乗り入れ客車列車は、1986年9月に行われた「ミステリー列車」と思われます。国鉄の12系客車を自社のTDElO型が当時の終点神海まで牽引しました。
 9月に引き続き10月にもミステリー列車が運転され、TDE103が担当しました。衣浦臨海鉄道出身のTDE103(←衣臨初代KE655)は高崎運輸に譲渡され、樽見鉄道を去りました。

●全線開通から1990年頃まで

そして1989年3月25日、悲願だった樽見までの全線開業の日を迎えました。それ以降、沿線の天然記念物「薄墨桜」の花見客輸送用としてシーズンにはJR東海の14系客車が名古屋から乗り入れて来るようになりました。特に開業初年度は大変な盛況ぶりで、予想を大幅に上回る乗客が集まったといいます。客車列車2本の運転に備えて国鉄清算事業団からDElO形が購入され、TDElO5となりました。因みにTDElO5号機はスクラップとしての価格で購入したため新製のTDElOlの1/200以下の費用で済んだそうですが、貨物輸送の減退によってまだまだ使えるDElO形が大量に余剰廃車される時代にあって、1両でも活用されることになったのはなによりでした。
 全線開業時にデビューした自社改造のパノラマ車、うすずみ1型は、翌1990年の桜ダイヤから専用編成に組み込まれることになりました。前後を固めたのは1989年8月にJR四国から導入された3両の50系客車(オハフ800形)でした。一般公募によって「うすずみファンタジア」と名付けられたこの編成は沿線在住の伊藤嘉晃画伯によるデザインです。
 しかし、オハフ800には冷房がないのが災いして活躍期間は短く、1994年にJR東海から14系客車が導入されると早くも引退を余儀なくされました。
 花見シーズンで客車列車が2本走ると貨物の重連牽引仕業を含めて全機が出払うこともありました。しかし、その後は全線開通当時のような勢いは見られなくなりました。


新線区間をゆく記念列車
新線区間をゆく樽見鉄道全線開通記念列車

樽見開業は沿線きっての名所、薄墨桜の開花に間に合わせたものとなりました。全線開業の日、TDE10を両端に付けた開業記念列車が運転され、自社で貨車を改造して製作されたパノラマ車、うすずみ1形も編成に加わりました。旧形客車の塗装は新線開業より前に茶色+赤帯に塗り替えられています。
 両端のTDE10には母校鉄道研究会作成のヘッドマークが取り付けられました。私はOBとして乗車、撮影会に参加しましたが、前後の予定が詰まっていて、とんぼ返りを強いられました。

赤帯入り旧形客車3連
赤帯が入った旧形客車3連の通学列車を牽くTDE101

2両では輸送力が不足するため、いつの間にか朝の通学列車は3両編成に増強されていました。
 この日はTDE101が定期客車を1往復牽引したあと単機で大垣へ向かい、団体の「ユーロライナー」(右参照)を牽引する運用で、母校鉄研製作のヘッドマークがすでに取り付けられています。

ユーロライナーの団臨
このシーズン初入線を果たした「ユーロライナー」

全線開業した1989年の9月、JR東海の欧風客車「ユーロライナー」が生命保険会社の団体臨時列車として初入線を果たしました。丁度この頃は同社の開業5周年にあたったため、母校鉄道研究会でデザインしたヘッドマークを取り付けていただきました。
 私は「ユーロライナー」の先頭を母校のヘッドマークが飾るとあって、喜んで遠征することにしましたが、数日前までレールバスに取り付けられていたマークをご厚意で「ユーロライナー」牽引機の前後にわぎわざ取り換えていただいたため、往復で異なるデザインのマークを撮影することができました。

旧形客車と12系(1000系)の混結
1シーズンだけ見られた旧形客車と12系(1000系)の混結

全線開業1周年となった1990年の桜シーズン、JR東海から12系客車が購入され、旧形客車は引退することになりました。ただし、12系の樽見寄りに1両だけオハフ500が連結され、雨で空いていた客車列車もこの1両だけは鉄道ファンでにぎわっていました。
 安全性向上のための勧告を請けての事とはいえ、たった1年で退役することになってしまったオハフ503、504が哀れに思えました。ピンクの帯を入れて1000系となった元JR東海の12系と旧形客車の混結は過渡期の貴重な記録となりました。

後部にレールバスを併結
専用塗装のTDE102、元JR四国50系のオハフ800とうすずみ1形からなる「うすずみファンタジア」の後部にレールバスが・・・。

1990年の桜ダイヤの時、思わず目を疑う光景を見ました。なんと客車列車の最後尾にレールバスがぶら下がっているではないか!!
 午後の「うすずみファンタジア」のスジに回送扱いで樽見から本巣までハイモ230が連結されていました。このようなユーモラスな編成が見られるのもローカル鉄道の良いところですね。

確かにおまけのレールバスが連結されている。
写真、文:愛知県、早川幸宏様

谷汲口、満開の桜とハイモ230形
満開の桜の下をゆくハイモ230形軽快気動車

谷汲口駅には桜並木があります。なかなか満開のタイミングに訪れることができませんが、この時はあいにくの雨ながら見事な桜を満喫しました。
 車両は全線開業前後に導入されたハイモ230形で、車体の大型化、エンジン増強を図ったボギー車です。

ユーロ色14系を牽引するTDE101
なのはなと客車列車との組み合わせが楽しい。ユーロ色14系を牽引するTDE101。

JR東海、「ユーロライナー」増結用として登場したユーロ色14系客車は1990年桜ダイヤにJR線からの乗り入れ列車「薄墨桜号」として入線しました。
 このときは塗色変更のみでしたが、後にアコモ改造(客室のハイグレード化)で座席定員が減少、輸送力を要する列車には向かなくなってしまったためか、翌年からは「薄墨桜号」には使われなくなりました。
 1995年に「ヘルシートレイン」として再び入線しましたが、残念なことに一般色との混色編成でした。
なのはなと客車列車との組み合わせが楽しいですね。
写真、文:早川幸宏様

助っ人、JR貨物のDE101061
JR貨物稲沢機関区のDE101061が牽引する「うすずみファンタジア」

1991年の桜ダイヤは思わぬハプニングが起きました。TDE101の故障によりカマ不足となってしまったのです。所定のダイヤを維持すべく、助っ人としてJR貨物からDE10を1両借り入れて急場をしのぎました。友人から「うすずみファンタジアをJR貨物のDE10が牽引している!」と聞き、急いで駆けつけました。
 この年は桜が咲くと天気が悪い「花曇り」に悩まされました。
写真、文:早川幸宏様

JR東海の旧形客車
延長開業区間をゆくTDE113牽引、JR東海のオハフ46×3。

JR東海のオールドタイマー、オハフ46形(旧形客車)は樽見鉄道にも足跡を残しています。観光資源には事欠かない樽見鉄道の目玉商品、「ヘルシートレイン」(JR線からの直通団体専用列車)として1995年11月に入線しました。
 かつては全国至る所で見られたDE10と旧形客車の組み合わせを私はまともに撮っていなかったので、これを撮らずにはいられませんでした。延長開業区間をゆくTDE113+オハフ46×3。写真の列車は樽見での折り返しの間合いに定期列車のダイヤで本巣まで一往復したものです。
写真、文:早川幸宏様

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