今回はJRオリジナル形から逆戻りとなります。実は前回、JRオリジナルの新型インバーター機関車が登場するまで、好調な需要に応じるために新会社へ引き継がれることなく、国鉄清算事業団の財産になった機関車を購入して復活させたものがあることに触れました。それは今回、そのうちの1両が対象となることへの伏線でもあったわけです。
EF65については2号機を始めとした1桁番号機も含まれ、ファンを喜ばせました。その多くは国鉄時代のままの塗装でしたが、9号機は復活に際して茶色塗装になりました。
EF65が登場した1964年、既に新標準塗装が適用されており、茶色で新製されたものはありません。しかし、復活当時は減ったはずの茶色の機関車が増えてきました。国鉄末期、EF5889号機が茶色塗装となって人気を集めたり、EF551号機が28年ぶりに車籍復活して本線上を走ったのは有名な事例です。EF641001号機やDE101705号機など、「こんなものまで・・・。」と思わせるほどの茶色い機関車の流行期でした。9号機は貨物会社にも話題の機関車をという趣旨で茶色塗装にされたと言われていますが、その背景には茶色い機関車の流行があったものと考えられます。
しかし、たまに撮影会で展示されることがあった以外は、話題の機関車にしてはあまり目立ったイベントへの抜擢はありませんでした。関東の配属になればもう少し表舞台が与えられたものと思われますが、稲沢機関区の配属で、他の同型機と同じように運用されていました。当時の稲沢機関区は50両近いEF65が配属され、捕まえるのが難しい1両でした。
強いて言えば、JR西日本の客車の試運転列車を貨物会社の稲沢機関区が受け持っていて、トワイライトエクスプレスの日に同機が充当されたことがあります。それは運用担当者の「粋な計らい」と言われましたが、情報通の限られたファンにしか知られていないものでした。
そんな中、唯一無二と思われるイベント列車への充当がありました。1993.4.4、レールウエイライター、種村直樹さんと行く貨物線ミステリー列車というツアーがあり、JR貨物の機関車がJR東日本の「スーパーエクスプレスレインボー」を牽引することになったのです。品川を出る時点で先頭をEF659、反対側をEF651065(当時はJR貨物試験塗装)が務めました。同列車は新宿-田端(折返)−金町(折返)−新小岩−小名木川(DL牽引、折返)−新小岩−金町−常磐線−武蔵野線−新鶴見−浜川崎(折返)−横浜羽沢−国府津(折返)−大船−根岸線−高島−鶴見−(海底トンネル)−東京貨物(タ)−浜松町(折返)−新宿と、通常旅客列車が通らない貨物線を多数走行し、乗客はもちろん、情報を聞きつけて集まったファンを楽しませました。
その後、同機は地味な貨物列車を牽く毎日が続きましたが、運用途中で深刻な故障が発生。近江長岡駅に留置されていましたが、機関区や工場へ移動させるのも困難な状況で、やむなく現地で解体されるという残念な最期を迎えました。
特別塗装機EF659(稲)の晴れ舞台。レインボーを牽いて新金線をゆく。 1993.4.4 (国道6号線と京成本線の中間付近)
当列車について、動画の公開を始めました。EF659号機に重点を置いています。また、走行経路を追った地図も盛り込んでいます。閲覧はタイトル画像からどうぞ。